工事中を見に行ったり、入居後に基礎クラック(ひび割れ)が入っているのを見つけると、建物の安全性や耐久性に対して不安が募りますよね。
しかし、慌てることはありません。
基礎のクラックには補修方法があり、適切な対処を行えば安全性を確保することができます。
今回は、戸建て住宅の基礎クラックについて、補修方法を含めて解説していきます。
不安を解消して、安心して暮らせるようになりましょう。
結論として
・クラックには許容範囲がある
・クラックには決められた補修方法がある
・種類によってはクラックが入っていも問題ないコンクリートがある
基礎コンクリートのクラックについての問い合わせは平均して年に10件ほどあります。
中には「監督を替えろ!」「こんな家、解約だ!!!」とお怒りのお客様も多数いらっしゃいました。
そのようなお客様に対して実際にご説明し,ご納得いただいた内容を今回紹介します。
新居の工事をに見に行って「鉄筋の錆」の次に気付くのは「基礎コンクリートに入るクラック(ひび割れ)」ではないでしょうか?
文字通り建物の基礎なる部分のクラックを見て不安にならない訳がありません。
この後そのような不安を和らげるクラックの種類、補修方法を紹介します。
では、早速参りましょう!
クラック(ひび)の種類
クラック(ひび割れ)にはヘアークラックと構造クラック、施工不良によるクラックの3種類あります。
ヘアークラックと構造クラックの判別はその幅と深さで決まります。
クラックの幅が0.3mm未満、深さは5mm未満はヘアークラック、0.3mm以上、深さ0.5mm以上は構造クラックという判断になります。
計測方法
では、どのようにクラックの幅と深さを測るのか?について説明します。
実際1mm以下のひびをどう計測するのか不思議ですよね。
クラックの幅を計測するにはクラックスケールという専用の定規を使います。
下は計測中の画像です。
クラックスケール上の黒い筋にクラックを当てて幅の測定をします。
このクラックスケールを使うと0,1mmまでのクラックの幅を測ることができます。
クラックの深さの計測方法は細い針金を挿して計測します。
現在私の知る限りになりますが0.1mmのステンレス線が最も細いです。
ヘアークラック(幅0.3mm未満)
ヘアークラックの原因はコンクリートの乾燥収縮により発生します。
コンクリートは水分とセメントが化学反応をして硬化しますが、硬化後にコンクリート内部に残った水分が蒸発して体積が減る事により入るクラックです。
ですので、このヘアークラックどんなコンクリートにも発生しています。
ヘアークラックは表層的で微細なため構造的に無害なクラックと判断します。
構造クラック(幅0.3mm以上)
次に構造クラックですが、これは地盤の不同沈下や地震、荷重(基礎に乗っている建物の重さ)に対しての強度不足により発生します。
クラックの幅は0.3mm以上で構造クラックと判断します。
幅が0.5mm以上時にはコンクリートの向こう側(裏側)まで達していることもあります。
構造クラックに対しては上棟前であれば壊して作り変えるのが一番ですが、上棟後、入居後はそこまで施工会社へ求めることができないのが現実です。
構造クラックの対応として、まずクラック発生の原因を探します。
例えば地盤の不同沈下の場合、これ以上不同沈下が進行しないように地盤に対して薬品を注入したり、コンクリートや鋼管等で補強をして、これ以上クラックが進行しなくなる対策を行ってから、次にクラックへエポキシ系のやセメント系の材料を注入してクラック部分の補強、補修を行います。
施工不良によるクラック
施工不良によるクラックの原因は主にカブリ厚さです。
カブリ厚さとはコンクリートの表面から1番近い鉄筋の表面までの距離のことです。
下の図は一般的な鉄筋コンクリート造の柱を水平にスパっと切った断面になります。
このカブリ厚さが少ないとコンクリートの中の鉄筋に沿ってクラックが発生します。
以前見かけたのは基礎の耐圧盤で碁盤の目にように縦横に配筋の通りにクラックが入っていたので、施工不良として壊して作り替えました。
現在法律で品質保証、欠陥商品に対しての罰則や製造者側への損害賠償等を請求することができます。
ことに製造業、特に建売り住宅は品質に関してはひと昔のような”売ったら終わり”的な考えの会社は殆どありません。
品質に責任を持たない会社は黙っていても淘汰されていきますし、実際そのような会社はこの先生き残れないでしょう。
次はクラックの補修方法です。
補修方法はつぎの3種類の方法があります。
・クラック被覆工法
・注入工法
・充填工法
では順を追って説明します。
クラック被覆工法
クラックの幅が0.2mm以下の軽微なクラックの上に塗膜を形成して防水性、耐久性を向上させる目的で使用される工法です。
比較的軽微な準備で施工できるのでご入居後でもご迷惑をかけることが少ないです。
また、クラックの幅が大きい場合やクラックの幅の進行に対する追随性がないため構造クラックではなくヘアークラックに対して
施工します。
クラック表面のみにセメント系の材料を被覆(表面に塗ること)するのみの工法なのでクラック内部の処理ができないので
施工の機会はほとんどないです。
注入工法
クラックの幅が0.2~0.5mm程度のクラックに樹脂系、セメント系の材料を注入して、防水性、耐久性を向上させる目的で使用される工法です。
この工法では圧力ポンプを使って圧入しますので注入量のチェックができ、作業員の熟練度による補修品質に斑が出ないのが特徴です。
また、圧力ポンプを使うため0.2mm以下のクラックにも注入が可能。
この工法もクラック被覆工法と同様比較的軽微な準備で施工ができます。
充填工法
クラックの幅が0.5~5.0mm程度の比較的幅の大きいクラックに対して使用される工法です。
クラックに沿って幅10mm、深さ10~15mmでコンクリートをU字又はV字形にコンクリートを彫り込んで、彫り込んだ部分にシーリング材、可とう性エポキシ樹脂、ポリマーセメントモルタルなどを充填してクラックを補修します。
この工法はクラック被覆工法や注入工法と違いコンクリートを彫り込んだりしますので音やほこりが発生しますので、施工をする際は音や埃などかなりご迷惑をおかけすることになります。
クラックが入っても問題ないコンクリート
ここから先は余談になります。
基礎に関する工事でクラックが入っても問題ないコンクリートがあります。
それは捨てコンクリートと呼ばれています。
捨てコンクリートは敷地に対しての基礎の位置を記すため”だけ”のコンクリートです。
土の表面に正確に消えることのない線を引くことはできないので、この捨てコンクリートが必要になる訳です。
捨てコンクリートは基礎の位置を記すためだけのコンクリートなので基礎コンクリートのように躯体(構造体)
ではないコンクリートです。
捨てコンクリートに「クラックが入っている」と連絡を受けたことがありますが躯体ではなく、その名の通り「捨てる」コンクリートになるので全く問題ありませんと説明させてもらっています。。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
基礎のクラックには発現原因、発現症状により種類、許容範囲があり、各症状に合わせた補修方法があるのを分かっていただけたと思います。
各建築会社で社内基準が設けられていることがありますが、概ね同じような内容です。
冒頭のお怒りなったお客様はご説明に4回ほどお伺いしてご納得いただき、最終的には「何度も説明してくれて家族も理解、納得したよ、ありがとう!」と感謝の言葉をいただき、笑顔で引渡しを終えることができました。
今回のクラックと同様に基礎の鉄筋の錆についても年に数回は質問、問い合わせがあります。
クラックより多いかもです。
他にも基礎工事に関する記事のリンクを下に貼りますので、是非ご覧になってください。
以上、帯刀でした。
最後まで読んでいただきありがとございます。
少しでもお役にたてたのなら幸いです。