建築の現場監督をやっているとたまにこんな質問、相談を持ち掛けられることがあります。
・大工さんによって家の良し悪しは決まるの?
・手抜き工事ってホントにあるの?
・いい大工さんの見分け方教えて欲しい
・気付いた事、気になる事は大工さんに言ってていいの?
・大工さんへのご祝儀はいくら?相場ってあるの?
大体こんな感じですね
要するに大きな金額の買い物なので失敗したくない、後悔したくない気持ちでいっぱいで、不安なのかと思います。
まあ、当然ですよねプラモデルの家とは訳が違います(笑)
中でも大工さんに関する質問、相談が比較的多い感じがしますので今回は木工事、大工さんに絞って書きます
この記事を読んでくれた人には家づくり失敗してほしくないので木造、非木造併せて建築工事の現場監督歴35年、一級建築施工管理技士の帯刀が裏話的なことも含めてお伝えします
それでは、参りましょう!
大工さん(木工事)によって家の良し悪しが決まるの?
結論から言いますと…
大工さん個人の技量はさほど差がない、というか差が出ないです。
理由は二つありまして、
ひとつ目は柱や梁などの構造体の加工が大工さん自身で行うのではなく木材加工専門のプレカット工場での加工、
ふたつ目は床材や建具(ドアや引き戸)などの建材が建材メーカーの規格品の使用です。
40年ぐらい前は大工さんが材木店からある程度加工(製材という)した丸太ではない木材を買い、加工場で大工さんが手作業で加工した木材で建てていましたが、この加工には熟練の経験と知識そして時間がが必要でした。
時間がかかるという事は人件費がかかり、工事費に大きな影響が出ます。(金額が高くなる)
しかし、これは極端な例えですがプレカット工場だと工場の入り口に丸太で搬入すると反対側の出口から製材、加工された木材が出来てくるといった具合です。
順番としては
①建築会社からコンピューターで作図した設計図のCADデーターでもらう
②CADデーターを基に木材の仕口や継手と言った接合部や荷重に対する検討
仕口とは材木が90度や45度のように角度をつけて接合する場合、継手は直線状に接合する場合の呼び方です
(ピンタレストより引用)
③上記によりまとまった加工データーを加工機へ入力
④加工、梱包
⑤搬出
といった感じです。
機械で加工できない複雑な加工は工場にいる熟練工が手加工する場合がありますが、ほとんどは機械が加工してくれます。
室内の建具も以前は建具は建具屋さん、枠は大工さんに依頼して作成してもらっていましたが、今は各建材メーカーが作成した尺やm(メートル)に合わせた規格品を使用する為、以前のような技量を必要としないのである程度経験があれば取付けられます。
さて、プレカットやメーカー製の建材を使うとなぜ大工さんの技量に差が出ないかというと、要はプラモデルと同じ要領で家が造られるからです。
これを大工さんに面と向かって言うと間違いなく怒られますが、事実プラモデルのようにプレカット工場での加工済みの材料やメーカーの工場で作った建材を使って家を「組み立てる」のが現状です。
ただ、これは大工さんに関わらずですが、ひと手間かけてくれる職人さんによって「よりいい家」になる事はあります。
そのひと手間とは室内であれば使い勝手を考えて監督に助言、変更したり、屋外であればより雨が入りにくい工夫や見た目が良くなるように金物を余分に取り付けたり、下地の防水紙の貼り方を変えたりチョットした手間のことですね。
要するに加工品や既製品を使う事で人(職人さん)の手が加わるところがほぼ無いという事です。
だからと言って経験のない素人が大工さんになれるかというとそうではありません。
細かいことをいえば工具の使い方、釘やビスの打ち方、木の特性など基本は押えないと仕事にはならないですね(笑)
手抜き工事ってホントにあるの?
こちらも最近はほぼないですね。
なぜかというと今は建築会社の方で外部の検査機関での各検査を実施していからです。
逆に「うちは全て社内で検査をしています」なんて会社は敬遠した方がいいかも。
ではなぜ、わざわざ費用をかけて外部検査機関を使用しているかというと自社検査が手抜き工事の温床になっていたからです。
外部の検査機関であれば手抜きや施工不備が後から発覚すれば検査会社として沽券にかかわるからです。
それはそうですよね、お金をもらって検査したけどロクに見ていなければ二度と検査を頼まれませんからね(笑)
なので、ポイントとしては外部検査機関を使用している会社、そして検査内容にも注意が必要です。
基礎の配筋検査と上棟後の金物検査のみでしたら他は検査なしということになります。
他にも基礎の出来形、外壁下地の防水検査、断熱材の検査、木工事完了時の木完検査ぐらいは実施している建築会社を選ぶことをおすすめします。
いい大工さん(建築会社)の見分け方
ひと昔前は仕事が雑、適当な大工さん(建築会社)はいましたが、今はほぼ淘汰されたのではないでしょうか?
なぜか?
これにはSNSの力が大きいと思います。
以前はTVやラジオでしか得られなかった情報が、SNSから口コミのような形で簡単に得られるようになりました。
例え建設会社がしっかりしていても実際に作業している職人さん達が適当な仕事をしていたら、結果建築会社の評判が下がりますから建築会社も職人さんを選ぶことになります。
また、SNSの口コミやこのようなブログなどで勉強している消費者が多いことは建築会社でも承知しています。
消費者の目が肥えているので最近は建売でも「安かろう悪かろう」なんて商品は売れませんし、購入後の消費者救済制度もありますので争いの場では建設会社の方が立場は弱いです。
あと、注意が必要なのは建築会社から提出される見積書です。
見積もりの内容が「一式○○○○万円」っていうのは詳細が分からないので注意が必要です。
会社によっては「坪/○○万円」というところが多いですが、できるだけ細かく明細が出る会社がおすすめです。
また、契約時に購入後のアフター体制の説明がある会社もいいですね。
買う側としては分からない事はなんでも何度でも聞くことが大事です。
契約書にハンコを押して「後の祭り」となることが少なくありません。
遠慮は無用!
後で後悔しない為にも契約内容の確認、納得をしてからハンコを押すようにして下さい。
気付いた事、気になる事は大工さんに言っていいの?
大工さんをはじめ職人さん達は「怖い」というイメージがあると思いますが、
現場へ行って気付いた事や気になる事は大工さん(職人さん)に聞いて全然問題ないですよ。
しかし、聞き方には注意が必要です。
間違っても足で指して「大工さんこれって…」なんてことをしたら確実に怒られます。
よく考えてください、逆の立場になれば分かりますよね?
どっちが上とか下とではなく対等の立場として接すれば、怒られたり嫌な顔をされたりすることはないですよ。
はじめは取っ付きにくい人が多いですが、普通に話をしていると普通に会話ができるようになりますので、勇気をもって話しかけてください(笑)
職人さんって案外話し好きの人が多いですよ。
大工さんへのご祝儀はいくら?相場ってあるの?
上棟時とかのご祝儀は地方によって差があると思いますが、関東地方では概ね
担当大工さん(棟梁)には3万円、他手伝いに来てくれた人たちには1万円と言ったところでしょうか。
ここで注意するのはご祝儀を包んでいないから仕事が雑になるなんてことはないです。
最近はご祝儀が出ないところが殆どです。
なので、ご祝儀が出ると喜ばれなすよ(笑)
まぁ、そもそもご祝儀は施主側の気持ちなのでそんなに気に掛ける必要はないですね。
「気は心」っていうじゃないですか(笑)
まとめ
お疲れ様でした。
いかがでしたか?
今回は住宅工事での工程上一番工程の長い木工事、大工さんについてに記事になりました。
要するに昔から比べると手抜きする箇所がない、検査が充実しているので手抜きができない、またSNSなどで悪い評判はすぐに拡散されますので、建築会社としても厳しく対応してると言ったのが現状でしょうか。
建設に携わる人達は他の製造業と比べると一線を画すのは私も認識しています。
ですが、相手(職人さん)も同じ人間なので普通に話しかければ普通に返事が返ってくる、普通の事ですよね。
肩肘張らずに付き合っていただければと思います(笑)
※以前書いた基礎の鉄筋、基礎コンクリートについての記事のリンクを下記に貼ります。よかったら一緒に読んでみてください。
帯刀でした、ありがとございました。